学者として成功したこと、失敗したこと、その土台のあり方

一橋大学名誉教授 元消費者委員会委員長 元国民生活センター理事長 松本恒雄

1 駆け出しのころ

 研究生活を始めた1970年代は、不法行為法ブームであり、外国法研究としては、ドイツ法主流、フランス法研究が勃興してきた時期にあたる。にもかかわらず、契約法や担保法を対象に研究し、最初の論文は英米法の不実表示の法理に関するものだった。この法理は、四半世紀後に消費者契約法の誤認取消権として結実した。

 不実表示の問題に「情報提供者の責任」という視点からアプローチしたので、その後、情報、IT、デジタルの問題につながることとなった。英米法に続き、ドイツ法に関する論文も公表したが、フランス法の研究は留学のため途中で中断した結果、1冊の研究書にできなかったという最初の大きな失敗がある。

2 アメリカ留学

 広島時代の1981年から83年まで、アメリカのコロンビア大学に留学した。民法研究者でアメリカ留学は極少数派だった。連邦議会で製造物責任法案の審議が行われていることを知り、判例法の国なのになぜ立法かという素朴な疑問から、予定外の製造物責任法の研究に取り組んだ。

 マンハッタンの116丁目にあった大学のアパート住まいで、ニ・・・

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