裁判記録の保存の必要性と最高裁の記録廃棄の問題

弁護士(東京) 塚原英治

記録は捨てるのが基本

 日本の裁判所は、記録は保管期限が過ぎたら捨てるのが基本です(最高裁規則である「事件記録等保存規程」8条)。刑事裁判の記録だけは、刑事確定訴訟記録法によって裁判確定後は検察庁で保管・保存することになっていますが、保管期間経過後に原則捨てるという基本は同じです。

 事件記録等保存規程では、「資料又は参考資料となるべきものは保存期間満了の後も保存しなければならない」と定めています(9条2項)。これを「特別保存」と呼んでいます。この規定については基準となる通達も1992年に出されているのですが、裁判所の中では極めて狭く解釈されてきました。

 民事事件の判決や和解調書などを除く裁判記録の保管期間は1999年までは10年、2000年からは5年ですが、東京地裁の戦後の民事行政事件で、2019年2月時点で、この期間を超えて「特別保存」されていたのはわずか5件しかありませんでした。これが判明したときはほんとうに驚きました。重要な事件が争われることの多い東京地裁における戦後の何十万件という民事訴訟・行政訴訟の中でたった5件です。そのうちの1件は、私たちが前年に保存を申し・・・

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