欠陥住宅紛争の基礎知識(62)
─欠陥住宅の立証(3)─

弁護士(東京) 河合敏男

4 証人尋問

(1)当事者双方から専門家(建築士)の意見書が出て対立した場合は、専門家の証人尋問によって、それぞれの意見書の信用性を争うことになる。特に相手方専門家に対する反対尋問が重要である。筆者の経験した事案であるが、施工者側が、構造耐力不足の出力された構造計算書を建築士の「計算上安全である」と記載した意見書とともに出してきたことがある。この建築士を尋問したところ疑問が氷解した。この建築士は、計算結果の欄のNO(ノー)と出力された文字を、NO.(ナンバー)と読み違えていたのである。構造計算書の読み方も知らない建築士もいるのだと、あきれた覚えがある。

(2)専門家に対する尋問は、当然専門分野の尋問になるので、弁護士もかなり周到な事前準備が必要である。この専門家に対する尋問で筆者が大変有用と思うのは、対質尋問であり、お勧めしたい。実務上あまり行われていないようであるが、筆者は対質を要望してこれまで2回これを行った。対質尋問は、技術上の対立点ごとに双方の意見の正当性、論理性、客観性をその場で比較できるので、聞いている裁判官にもわかりやすいし、尋問する弁護士にとっても専・・・

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