両建の性質及び危険性に着目し、説明義務違反、過当取引及び指導助言義務違反の違法性を認めた判決(東京高判令和5年3月16日)

弁護士(東京) 竹村直樹

1 管理者日誌の信用性について

 本件において、サンワード貿易の外務員が取引開始後に作成する手書きの管理者日誌の信用性が争点となった。

 本判決は、原告らは、本件各取引をするまで商品先物取引(以下「先物取引」という)の経験がなかったのであり、値段の変動を見極める能力や相場観を有していたとはうかがわれないことに、外務員と原告らとの間で行われた面談の録音内容を併せれば、原告らは、基本的に、外務員の勧めに応じる形で本件各取引を行っていたことが認められる。にもかかわらず、外務員の管理者日誌を通覧しても、専ら、原告らの方が能動的に取引方針あるいは相場観といったものを外務員に告げ、それに対し外務員が受動的な立場で告げられた内容を了解したといったたぐいの記事しかないことに鑑みれば、外務員の管理者日誌は、基本的に、実際には外務員が勧めて原告らがそれに応じた事柄を、原告らが能動的に方針等を打ち出し、それを外務員が聞き置いたといったたぐいの表現形態にして記事が作られているものと解するのが合理的である、と認定している。

2 説明義務違反について

(1)本判決は、先物取引業者及びその従業員は、顧客・・・

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