成年年齢引下げと若者の消費者トラブル
─引下げから1年を迎えて─

弁護士(富山) 谷口 央

1 成年年齢引下げ後の18歳・19歳の消費者トラブル

 2022年4月1日に民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。

 成年を迎えると消費者トラブルに関する相談が増えるという統計データがあることから、成年年齢が引下げにより、未成年者取消権を失う18歳、19歳の消費者被害拡大が懸念されていました。

 独立行政法人国民生活センターの発表によれば、成年年齢が引き下げられた2022年4月1日から同年10月末までの18歳・19歳の消費者トラブルの相談件数は5108件で、前年同期(相談件数4849件)と比べると、259件増えています1

 相談件数は、成年年齢引下げ前の同期と比べ、微増に留まっているのは、これまでの普及啓発、消費者教育が功を奏しているから、という評価もできそうです。

 しかし、他方で、令和4年度版消費者白書によれば、困っていることや心配事がある場合の相談先として「行政の窓口や公的な相談員等」を「相談先とは考えていない」と選択した回答の割合は、10歳代後半では、59.2%にも上っています2。この統計も踏まえると、前記相談件数に関する統計資料には表れていない若者の消費・・・

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