生活保護世帯・若者の高卒後の就学支援を後押しする画期的判決(熊本地裁令和4年10月3日判決、賃金と社会保障1819号42頁)

花園大学社会福祉学部教授 吉永 純

1 事案の概要

 生活に困窮した原告夫妻は同居の孫との3人世帯で生活保護の申請をしたところ、孫が高卒後看護学校(准看護師科、2年制)に在学中だったため、孫は世帯分離され(厚労省社会・援護局長通知第1—5—⑶「生業扶助の対象とならない専修学校又は各種学校で就学する場合であって、その就学が特に世帯の自立助長に効果的であると認められる場合」には世帯分離して差し支えない)、原告夫妻だけの保護が開始された。その後、孫は准看護師の資格を取得し、続いて正看護師の取得を目指して看護科(3年制)に入学した。看護科に在学中は、昼間は准看護師資格で就労し、夜に学校があるため、月収14~19万程度の収入が得られえることになった。孫はこの収入で、生活費や学費を賄い、3年次の実習(3年次は実習が昼間に行われ、就労収入が得られなくなるため生活費等の準備が必要となる)等に備えようとしていたところ、福祉事務所は世帯分離を解除し、孫と祖父母の3人世帯として保護の要否を判定し、孫の就労収入と祖父母の年金収入によって最低生活費を上回るとして保護を廃止した。この措置により孫はうつ病になり・・・

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