マルチ商法家族被害について マルチ二世の自分史の観点から

同志社大学 社会学部社会福祉学科 4回生 佐々木晴哉

1.序

 2022年10月、最大手マルチ企業A社は会員による勧誘行為において違反行為が発覚したため、6ヶ月の取引停止命令を下された。最大手のマルチ企業に行政処分が下ったことはメディアでも報じられ、また4月に勧誘が再開されたときも一部メディアでは取り上げられた。2022年12月に出版された『ルポ 脱法マルチ』をはじめ、その勧誘方法や異常な活動の実態が問題視されるようになってきた。違法性のある勧誘方法に加えて、大学生や社会人が借金や仕事、大学をやめてまでお金と労働力を捧げるカルト的な実態、その背景に示唆されているマインド・コントロールなど、“消費者としての”被害、すなわちマルチ会員本人の被害が訴えられてきた。

 しかし、マルチ会員の消費者被害は本人だけで完結しない。会員には配偶者や子どもがいる人もいれば、殆どの人には親がいる。会員が破滅への一途を辿るとき、それに巻き込まれずに済む親族は滅多にいない。この側面に光を当てたのが「宗教2世」問題だ。商業カルトとも言われるマルチ商法の親族被害という側面は『みんなの宗教2世問題』(横道,2023)でも取り上げられ・・・

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