原発回帰について

元福井地方裁判所裁判長 樋口英明

1 はじめに

 岸田政権はロシアのウクライナ侵攻及びそれに伴う火力発電の燃料費の値上がりを契機として、矢継ぎ早に原発回帰に舵を切りました。原発は原則的には40年を超えて運転しないと決まっていたのを、審査等で運転を止めていた期間は40年に算入しないことで、実際上は老朽化した原発を長く動かそうとしています。これは、2011年3月11日に起きた福島原発事故を教訓に長期的には原発に依存しないという国民的合意を完全に無視したものです。

 現政権がこのような選択をしてしまったのは、原発の本質に対する無理解に起因しています。原発の本質は決して難しいものではなく極めてシンプルなのです。

2 原発の本質:管理し続けなければならないこと

 原発の本質の一つ目は、原発は人が管理し続けない限り、大事故になるということです。例えば、トラブルが生じたとき、自動車ならエンジンを切れば安全になりますし、家電でもコンセントを抜いてしまえば安全になります。しかし、原発は運転を止めるだけではだめで、電気と水で原子炉を冷やし続けない限り大事故になるのです。停電したり断水したりするだけで大事故になってしまうの・・・

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