酪農危機の真相と打開策 乳製品の大量輸入の陰で乳牛殺処分と生乳廃棄が進む酪農危機の真相と打開策 

東京大学大学院農学生命科学研究科教授 鈴木宣弘

酪農家の7重苦

 日本酪農は7重苦に陥っている。

①一昨年に比べて飼料も肥料も2倍近く、燃料4割高、と言われる生産コスト高。

②コストが暴騰しても価格転嫁ができずに乳価は上がらない。

③追い討ちをかける乳雄子牛など、子牛価格の暴落による副産物収入の激減。売れない子牛が薬殺されることに育てた酪農家の女性陣の精神的疲弊も深刻化。

④さらに、これ以上絞っても授乳しないという減産要請で、4万頭もの乳牛の殺処分と、ついには、生乳廃棄まで生じている。

⑤脱脂粉乳在庫の処理に北海道の酪農家だけで年350億円以上の負担金が重くのしかかる。

⑥「低関税で輸入すべき枠」を「最低輸入義務」と言い張り、国内在庫が過剰だから、乳価は上げられない、牛乳搾るな、牛殺せ、と言いながら、北海道の減産量14万トンと同じ生乳換算14万トンの乳製品輸入は続ける不条理。

⑦コスト高による赤字の補填、政府が在庫を持ち、国内外の援助に活用するという他国では当たり前の政策がない。

 乳製品需給の緩和は畜産クラスター政策による増産誘導とコロナ禍による在庫増が主因で酪農家のせいでない。需給緩和だからと言って赤字で・・・

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