消費者取引に関する横断的な行政ルール「ぜい弱な状況にある消費者の保護に関する規定」について

弁護士(大阪) 吉田 実

1 はじめに

 本稿では日弁連が2022年2月18日に発出した「公正な消費者取引を確保するために分野横断的に適用される行政ルールの整備を求める意見書」の意見の趣旨の2(4)で採り上げた「一般的な消費者を基準とする規定だけでなく、高齢者、障がい者又は若年者等のぜい弱な状況にある消費者に関する規定を設けること。」とする点につき論述する。

2 「ぜい弱な状況にある消費者」に関する規定の必要性

 従来の我が国の消費者法制では、いわゆる「平均的な消費者像」が前提とされており、加齢や若年、障がいという特性や、精神的ショックなどによって判断能力や交渉力の低下したいわゆる「ぜい弱な状況にある消費者」を保護する規定は、ごく一部の民事ルールを除いて存在しないのが現状である。

 しかし、社会の急速な進展や高齢化が進む中、これらぜい弱な状況にある消費者の存在を考慮せずに、公正な取引社会を構築することはできない。即ち、消費者取引に関する横断的な行政ルールを作成するにあたっては、ぜい弱な状況にある消費者に関する規定が欠かせない。

3 「ぜい弱な状況にある消費者」に関する規定を創設すべき法的論拠

 消費者基本法・・・

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