第7章 先物取引・詐欺的利殖商法

弁護士(東京) 荒井哲朗

第1 はじめに

 今回は、本誌132号掲載の消費者法白書で紹介された以降の裁判例(主に先物取引裁判例集85巻及び86巻に掲載されている裁判例)の中から、先物取引・詐欺的金融商品取引被害について被害救済手続実務上参照価値があると思われるものについて紹介することとする(なお、裁判例の引用に当たっては、略記の説明部分、証拠や認定事実を引用する部分の記載を略しているほか文脈を損なわない程度に簡略化している部分があり、必ずしも逐語引用ではない)。

第2 商品先物取引・外国為替証拠金取引(くりっく365)・株価指数証拠金取引(くりっく株365)等証拠金取引

 引き続き少なくない被害が生じている。

 判決には、指導助言義務違反の違法性を認めるもの、これらに両建の問題点を絡めて論じるものが増えてきているように見える。

1 新規委託者保護義務違反

 東京地判令和4年12月19日は、外務員が虚偽の銀行口座名、預金額を記載した投資可能金額を増額する申出書を交付させたとし、投資可能金額の増額は「無効」であるとしたうえで、管理規則上の取引上限額を上回る必要証拠金額の取引を行わせたとして、新規委託者保護義務違・・・

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