第5章 証券・金融商品

弁護士(大阪) 中嶋 弘

1 資産流動化証券の裏付資産の実在性についての調査義務〜名古屋地裁令和4年4月19日判決(判例時報2549・66、裁判所ホームページ)〜

(1)事案の概要

 被告となった証券会社は、別の証券会社(A社とする)の紹介、助言、支援を受けて、オプティ・メディックス・リミテッド社(OPM社)及びメディカル・トレンド・リミテッド社(MTL社)が診療報酬債権を裏付資産として発行した社債を投資家に勧誘し、販売した。

 しかしOPM社とMTL社は社債発行によって調達した資金の大部分を診療報酬債権買取以外の目的に流用しており、発行された社債は裏付資産を欠くものであり、発行会社は破産手続開始決定を受けたため、投資家は破産配当金を除き元利金を受け取ることができなくなった。そこで投資家が社債代金相当額から破産配当金を控除した金額の損害を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案である。

 原告(投資家)が被告証券会社に損害賠償請求した根拠は、被告証券会社は誠実公正義務・適合性原則遵守義務・説明義務を履行する前提として、投資家に取得勧誘した本件社債のリスク等に関する重要な情報(裏付資産の実在性・・・

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