弁護士(大阪) 井上耕史
1 はじめに
ここ数年述べているとおり、過払金に関する裁判例は大きく減少している。しかし、既に何年も前に下級審裁判例の積み重ねによって決着済みであるはずの論点についても、裁判官が忘れたころに、再び蒸し返してくることもある。本誌で紹介された裁判例の中には、過去に紹介されたものと同じ論点のものもあるが、判例・実務の到達点を再確認し、貸金業者の蒸し返しを許さないために有益である。
これまでの到達点について、過去の「消費者法白書」や『過払金返還請求・全論点網羅2017』(民事法研究会。以下「全論点網羅」という)などの文献にあたって確認することも引き続き必要である。
他方で、消滅時効の延長効の可否、事業者ファクタリングなど、これまで公刊された裁判例が少ない分野で重要な裁判例も見られる。
2 過払金の充当ないし一連一体計算
(1)問題となる類型
過払金の充当が問題となるケースを大別すると、①貸金業者から借り入れた資金によって従前の取引を完済したものと扱う、いわゆる「切替え」「借換え」「貸増し」の類型、②基本契約による取引を完済後、取引中断期間を経て、同一基本契約又は新たな基本契約により・・・
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