霊感商法被害対策のための令和4年臨時国会での法改正について

一橋大学名誉教授 松本恒雄

1 霊感商法にかかわる新規立法と法改正

 2022年7月の安倍元首相銃撃事件の容疑者が、旧統一教会の信者の宗教二世であったことから、同年の臨時国会において、霊感商法の問題が大きく取り上げられ、同年12月10日に「消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律」及び「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」(寄附不当勧誘防止法)が成立した。

 メディアは、寄附不当勧誘防止法を「救済新法」と名付けて、あたかも霊感商法等による被害救済を大きく前進させるものであるかのように報道したが、実態は寄附の不当勧誘に対して行政規制を導入する「規制新法」であり、救済部分は、消費者契約法の改正を含めても十分なものとはいいがたい。

2 救済に関する民事ルール

 救済に関する民事ルールとしては、消費者契約法が改正され、第1に、霊感等による知見の告知の場合の取消権の要件(消契法4条3項8号)について、①当該消費者のみならず、その親族に生じる重大な不利益の告知も含むこと、②将来生じる重大な不利益のみならず、現に生じている重大な不利益への不安に乗じる場合も含むこと、③重大な不・・・

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