マルチ商法家族被害の救済

京都大学法科大学院客員教授(消費者法) 弁護士(京都) 住田浩史

1 はじめに:マルチ商法家族被害の実態

 マルチ商法は被害者家族に対してどのような影響を与えるのか。本誌134号のマルチ商法の被害者親族グループによる調査報告1では、親族は、金銭的なトラブルや健康トラブルなどのほか、本人から暴言を吐かれる、関係が断絶するという精神的な苦痛を継続的に抱えている、という深刻な実態が明らかになっている。また、ポーツマス大学のマーク・バトン教授らは、詐欺被害者とその親族に対するインタビューを行い、詐欺はパートナーシップや家族内の関係にダメージを与えると分析している2

 ところが、これまで、マルチ商法の被害者はあくまで本人のみであり、その家族は被害者として扱われず、家族からの適切な相談窓口が存在しないという状況であった。

 本稿では、マルチ商法家族の被害とその救済方法について検討する。

2 債権者代位権の行使

 まず、霊感商法についての不当寄附勧誘防止法の制定過程においても話題となった債権者代位権の行使があり得る。すなわち、被害者本人が業者に対して権利行使をしようとしない場合、本人の子や配偶者が、本人に対して扶養義・・・

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