消費者月間にあたってデジタルを考える

一橋大学名誉教授 松本恒雄

 2023年度消費者月間の統一テーマは、「デジタルで快適、消費生活術〜デジタル社会の進展と消費者のくらし〜」であった。チャットGPTをはじめとして、デジタル社会の進展が消費生活にも大きな影響を与えており、デジタルを取り上げることは時宜を得ている。

 アメリカのケネディ大統領が「消費者の利益の保護に関する特別教書」を連邦議会に送付したことを記念して、コンシューマーズ・インターナショナルが毎年3月15日に行っている世界消費者権利の日(WCRD)のキャンペーンテーマも、近年はデジタルを取り上げることが多い。2017年は「よりよいデジタル世界を」、2018年は「デジタル市場をより公正に」、2019年は「信頼できるスマート製品を」、2022年は「公正なデジタル金融を」であった。

 消費者月間のテーマとしてデジタルを取り上げるとなると、デジタル化によって生活がどれだけ便利になるかというプラス面の強調だけではなく、デジタルをネタにした欺瞞的商法(暗号資産への投資勧誘など)、デジタル機器の操作に不慣れな消費者に対する詐欺商法(ATMを操作して送金させる還付金詐欺など)、ネット上で誤った・・・

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