欠陥住宅紛争の基礎知識(60)
─欠陥住宅の立証─

弁護士(東京) 河合敏男

1 調査報告書

 前回まで解説した調査報告書が、契約不適合(瑕疵)を立証する基本資料となる。一般論として、意匠仕上げなどの軽微な契約不適合は示談交渉で解決することが多いが、構造欠陥など大規模な是正が必要となる場合は、訴訟でなければ解決しないことが多い。雨漏りについては、程度にもよるが、履行確保法が施行された以降は、実感として住宅紛争審査会での調停が成立しやすくなったと思われる。

2 欠陥原因の立証が必要か

 欠陥の立証については、従来より、欠陥現象だけでは足りず、欠陥原因の立証が必要であると言われてきた。しかし、すべての場合に被害者側に欠陥原因の立証責任が負わされることにはならない。小久保孝雄他編著『リーガルプログレッシブ・建築訴訟』(青林書院)180頁によれば、「特に新築建物において『雨漏り』が生じた場合、特段の事情がない限り、何らかの施工不良があったことが推定される(瑕疵の一応の推定)ものと解するのが相当ではないか」としている。裁判例としては、次のようなものがある。

① 札幌地判平成13年1月29日

 公庫融資の売買物件で、公庫仕様と異なる仕様とした場合、売主が当該施工につ・・・

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