消費者契約法による取消しと使用利益の返還
─「逐条解説」の記載の問題点と立法的手当てへの期待─

弁護士(大阪) 薬袋真司

1 不本意な和解

 昨年、中古車の売買契約について、消費者契約法による意思表示の取消しを主張して、売買代金の返還を求めた事件において、取消しを撤回して、解決金を受け取る形で和解に応じた1。解決金の額は、売買代金の1割に満たないもので、依頼者(消費者)にとって極めて不本意な和解であった。

 以下、本件事案の概要を紹介し、取消しにおける使用利益の返還の問題について、いくつかの指摘を行っておきたい。

2 事案の概要

 事案を簡略化して紹介すると2、消費者(原告)は、中古車販売店(被告。以下、「販売店」という)から、本件車両を約70万円で購入した。購入に際して、「修復歴やメーター改ざん無し」と明示されていた。

 数か月後、消費者は、より欲しいモデルの中古車が販売されていたことから、それを購入し、本件車両を下取りに出そうとした。鑑定を受けたところ、修復歴が確認され、予定していた下取り価格は20万円下がって、30万円になる見込みとなってしまった。

 そこで、消費者は、販売店に対し、修復歴が確認されたことを申し出て、代金の返還等を求めたところ、販売店は、自身も業者用オークションで「事故歴なし」で車・・・

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