「いのちのとりで裁判」
─襷をつなぐ横浜地裁勝利判決─

弁護士(神奈川) 井上 啓

1 いのちのとりで裁判とは

 2012年12月、総選挙で自民党が大勝し、第二次安倍政権が誕生、暗黒の10年が始まったが、自民党は生活保護費の10%削減を公約としていた。その年の春から「生活保護バッシング」が起こされていたが、選挙で勝つや、公約どおり、厚生労働大臣は2013年8月から1年ずつ3回に分けて生活保護基準を平均6.5%、最大10%引き下げたのである。その財政効果は3年間で総額670億円(いわゆる「ゆがみ調整」90億円、「デフレ調整」580億円)と見込まれた。

 この大幅な引下げに対して、全国の生活保護利用者1025名が29都道府県でその引下処分の取消しを求める行政訴訟を提起した。生活保護は憲法25条の定める生存権を保障する制度であり、最後のセーフティーネットといわれる。その引下げに反対し、処分取消しを求める裁判は、まさに「いのちのとりで」を守るものであるという意味で「いのちのとりで裁判」と命名された(雨宮処凜氏の発案)。神奈川でも2015年9月24日、横浜地方裁判所に48名の生活保護利用者が原告となって引下処分取消しの裁判を起こした。

2 引下げの根拠

 厚労省が今・・・

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