PL訴訟における「欠陥」とその「証明」をめぐる判例法

慶應義塾大学法科大学院教授 平野裕之

Ⅰ はじめに

 筆者は、2021年11月に慶應義塾大学出版会より『製造物責任法の論点と解釈』を出版した。製造物責任法施行後26年が経過し、相当数の判例の蓄積があり、裁判例は不揃いであるものの、大まかな方向性が認められ、その中で「欠陥」と欠陥、因果関係についての「証明責任」をめぐって裁判所が倣うべき判例法の形を浮き彫りにしようとした。本稿はその要旨をまとめるものである(本稿において頁数を引用しているのはすべて本書の頁数である)。

 欠陥について

 ⑴ 製品の許される危険か許されない危険か

 食品自体の形状等(餅が喉に詰まる、せんべいが堅い[21頁])や性質(コーヒーのカフェイン含有)につき、なんら危険がないことはありえない。超辛い食品も、辛いもの好きもいるので、指示警告して製造販売することは許される。こんにゃくゼリーも(19頁)、幼児に与えないよう指示警告をすれば良く、歯ごたえのある同製品を好む消費者を無視しえない 。危険があっても、その製品を欲する消費者の利益(幸福追求権)の保障も必要である。 設計によってより安全な製品が可能な場合に、一番安全な製品を基準・・・

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