弁護士新里宏二古希記念誌の発刊に当たって

編集委員代表 岩渕健彦

社会を変えてきた弁護士の挑戦─不可能を可能にした闘い─

著者:新里宏二
発行:民事法研究会
価格:3,000円(税別)

 新里先生を語る上で欠かせないキーワードは「優しさ」や「共感力」である。

 新里先生は、高金利引き下げ運動や商工ローン問題について語るとき、今でも弁護士登録から間もない頃に多重債務に陥っていた老夫婦が自殺し、その命を救えなかったことや元依頼者が商工ローン業者に振り出した手形を決済できず、首つり自殺をしたことを防げなかったことについての悲しみに触れずにはいられない。

 東日本大震災の津波で家を流されて、それでもローンに苦しんでいる人がいれば、涙を流さんばかりにその救済を試みる。貧困にあえぐ人を目にすれば、予算を確保する前にまずはシェルターの設立に奔走する。

 司法修習生に対する給費が打ち切られ、法曹の途を選択することが難しくなる人たちに会えば、その不公正に怒り、彼らの思いに共感し、難しいといわれる中で諦めることなく運動を行い、政治を動かし、最後には立法を勝ち取ってしまう。そして、「まだ谷間世代が救われていない」と述べ、今も頑張り続ける。

 そうかと思えば、旧優生保護法に関す・・・

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