任意法規の機能と消費者契約
─情報処理システムの視点─

名古屋大学准教授 松田貴文

1 はじめに

 消費者契約に関する法律の変化はめまぐるしい。消費者契約法は2000年に制定されて以降、2022年に3度目の大きな改正を迎えており、もう一つの柱である特商法においても重要な改正が何度もなされている。さらに、2021年にはデジタルプラットフォーム事業者をめぐる消費者の利益保護を目的として、いわゆる取引DPF法が制定された。こうした動きは社会状況の変化に対応しようとするものであり、その重要性は疑うべくもない。他方で、社会的要請に応じて設けられた個々の制度を統一的な視点から眺めてみることも重要であり、目まぐるしい変化の中では特にその意義は増していると言えよう。本稿ではこの点について、筆者の研究関心である任意法規というフィルターを通すことによって見えてくるものをスケッチしてみたい。

2 消費者契約における任意法規の機能

 一見すると任意法規と消費者問題は相性が悪い。消費者契約の基本的な問題は、消費者が自らの利益にかなう意思決定をすることができないという点にあるところ、任意法規はそのような消費者の意思決定による変更をその本来的性質とするものだからである。つまり、せっ・・・

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