食品トレーサビリティの法制化の必要性
─消費者の理解促進のために─

たねと食とひと@フォーラム運営委員 中野陽子

1 食品のトレーサビリティの現状

 食品トレーサビリティについて、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関であるコーデックス委員会は、「食品の移動を把握できること」と定義している。食べものが、「川上から川下まで」と言われる所以は、川上の農場で採れる原材料が工場で加工調理され、小売店までの流通を経て川下の消費者の食卓へ届くからだ。そして、消費者がこの食品の流れを確認するためには、食品トレーサビリティが有効な手段となる。

 日本の食品トレーサビリティに関する法律は、事故・事件が契機になって制定されている。安全確保が専らの目的で、食品衛生法や食品表示法などの法律が関わる。2003年にBSE問題で牛肉トレーサビリティ法、2010年に食用不可の米が食用に流通した事件で米トレーサビリティ法が品目固有で制定された。そして、水産物に対するトレーサビリティの取組みとして、2022年12月にはナマコとアワビ、2025年にはシラスウナギに限って、水産物流通適正化法が施行予定である。その目的は、密漁などで海の水産資源の急激な減少を防ぐ、つまり、SDGs1・・・

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