法基準と建物の耐震性

名古屋大学名誉教授 福和伸夫

耐震化は地震対策の一丁目一番地

 地震対策の一丁目一番地は、建物の耐震化です。強い揺れに見舞われると建物が壊れたり、液状化によって建物が傾いたり、土砂崩れが起きたりします。壊れた家の中に閉じ込められてしまうと、地震後に避難ができず、その後、火災や津波に襲われます。1995年兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)での長田での火災や、2011年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)での津波などを思い出すと、建物の耐震化の大切さが分かります。水害の場合はダムや堤防など、公共インフラの整備によって災害被害を減じられますが、地震災害では住民や企業などが保有する建物が大きな被害を受けます。このため民間の耐震対策が災害被害軽減の鍵を握ります。

既存不適格建物の耐震化

 兵庫県南部地震や2016年熊本地震のように、内陸の活断層がずれ動いた地震では、直下で地震が起きるため、震度7の強烈な揺れが襲います。残念ながら現行の耐震基準は震度7の揺れに対して建物の安全を保証するものではありません。耐震基準は地震被害を受ける中で改訂されてきたため、とくに古い耐震基準による建物は相対的に耐震性が劣ると考え・・・

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