消費者安全問題研究会 土庫澄子
1 東京地判令和3年3月26日─事案
平成26年10月22日、原告は都内港区で輸入自動車を運転して首都高速道路を走行中、右前輪が脱落してガードレールに衝突し、車体が破損した。この自動車はイタリア法人「Maserati S.p.A」(マセラティ社)が製造し、平成26年1月31日、原告は自動車販売会社から購入して使用を開始した。平成26年7月23日頃にホイールアラインメントの調整を受け、使用開始時の走行距離は約4万6530㎞、事故時の走行距離は、約6万1806㎞であった。
原告は自動車に欠陥があったとして、高級外車などを扱う外資系輸入会社Aと、Aの事業を譲り受け、併存的債務引受けを合意していたBに対して、製造物責任法に基づき1189万円余の損害賠償を請求した。
本件は自動車の欠陥に関して、事故の一因が運転者の速度超過もしくは事故前の調整ミスか、あるいは事故前から進行していた金属疲労かが争われた。
機械の製造物責任訴訟によくみられる誤使用が問題となるケースであるが、ハンドル操作で車体の向きを変える装置の一つであるボールジョイント破断面の技術的分析に焦点が絞られた興味深いケ・・・
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