消費者庁書面の電子化に関する検討会報告書の評価と課題

弁護士(埼玉) 池本誠司

1 これまでの経過

 消費者庁「契約書面等の電子化に関する検討会」は、2022年9月、政省令の在り方に関する報告書を公表した。

 デジタル社会の推進という政府の政策目標と官邸内の規制改革推進会議の議論に基づき、突然盛り込まれた特定商取引法及び預託法の契約書面交付義務の電子化の法案に対しては、消費者団体・弁護士会等による厳しい反対の声が広がった。これを受けて国会審議においても慎重審議の声が高まり、施行時期を1年間延期するとともに、参議院特別委員会の附帯決議1を通じて消費者庁に上記検討会が設けられた。その後、2021年7月30日から2022年7月28日まで19団体・個人のヒアリングと5回の検討会を経て、意見のとりまとめに至ったものである2

 以下では同検討会報告書の概要を紹介し、その評価と今後の課題を指摘する。

2 真意に基づく明示的な意思表明方法

(1)消費者の真意性を確保するための説明義務

 書面交付に代えた電磁的方法による提供について消費者の承諾を得るに当たり、事業者は次の事項を説明すべきである。

 ①書面での承諾が原則であること、②提供される電子データが契約内容を示した重要なもの・・・

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