日本学生支援機構の奨学金保証人過払訴訟控訴審報告
─今後の課題とともに─

弁護士(札幌) 西 博和

1 奨学金保証人過払い訴訟の概要

 事案の概要は判例速報を参照されたい。原告は、教え子の元奨学生が大学進学にあたり独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)から奨学金の貸与を受けるに際して、付き合いのある親戚がおらず保証人が立てられなかったため、大学進学の希望を叶えるために保証人となった元高校教師の男性(原告①)と、亡夫が原告の兄の子(甥)の保証人となっており、亡夫を相続した妻(原告②)である。

 両名は、民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同様)427条、456条により、本来であれば保証債務額が主債務額の2分の1であるにもかかわらず、それを超えて支払いをしたため、当該超えた額の支払いを求め(請求①)、JASSOが分別の利益の存在を知りながら、あえて原告らからの支払いを受けたことで「悪意の受益者」(民法704条)となることによる利息請求(請求②)に加え、原告らの無知・情報格差を利用した悪質な請求行為であり、請求権がないことを知りながらあえて請求した行為を不法行為(民法709条)として損害賠償請求(請求③)したものである。

 第一審(札幌地裁令和元年(ワ)第9・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。