生活保護基準引下げ違憲訴訟の現状

生活保護引下げ違憲訴訟弁護団員 弁護士(大阪) 西田陽子

1 全国の裁判の状況

(1)勝訴判決

 2022年7月30日時点で、三つの地裁で勝訴判決が得られています(大阪〔2021年2月22日〕・熊本〔2022年5月25日〕・東京〔同年6月24日〕)。

 勝訴判決のうち、とくに大阪地裁と東京地裁の判決は、行政訴訟の専門部で判断されており、価値が高いといえます。また、熊本地裁や東京地裁の勝訴判決は、大阪地裁の勝訴判決よりも進んだ内容です(後述)。

(2)敗訴判決

 九つの地裁で敗訴しています(名古屋・札幌・福岡・京都・金沢・神戸・秋田・佐賀・仙台)。

 数だけ見ると勝訴判決より多いようですが、これらの敗訴判決は似通った内容で、一部に「NHK受診料」という同じ誤字(「受信料」が正しい)もあり、裁判所が思考を放棄した「コピペ判決」と評価せざるを得ず、先例としての価値は低いです。

 この「コピペ判決」との指摘に対しては、国会で、最高裁長官代理の行政局長が、まさに国民の皆さまの疑念を生じさせる事態となったことについて、裁判所の信頼を揺るがしかねないものとして重く受け止めると答弁する事態となりました。裁判所にはきちんと判断し・・・

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