破産者公告不要論をめぐる議論の状況について

弁護士(宮崎) 小林孝志

1 破産公告による被害の実情

 現行破産法は、利害関係人に対する手続保障の観点から、公告制度を設けており、破産手続開始や免責許可決定等について官報に掲載する方法が採用されている。さらに、官報公告は電子化され、インターネット上で公開されるようになった関係上、破産者の住所・氏名といった個人情報が、誰でもが簡単に見ることができる仕組みになっている。

 官報の破産者に関する情報は、いわゆる「破産者マップ事件」によって拡散され、大きな被害を出したことは記憶に新しい。「破産者マップ」は、個人情報保護委員会による命令を受けて閉鎖されたが、その後も同種のサイトは繰り返し開設された。

 最近「新・破産者マップ」というサイトが現れ、日本地図上に破産者の住所氏名をピンによって表示する仕組みを作り、ピンの内容を削除するためには6万円、ピンの存在自体を削除するためには12万円という高額な対価をビットコインで払うように要求するようになった。「新・破産者マップ」は、サイトには「このウェブサイトの運営は海外で行われており、現地の法律が適用されます。」などと記載し、当初より、国の命令には従わないことを明言し・・・

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