いわゆる破産者マップに対する規制の動向

理化学研究所革新知能統合研究センター客員主管研究員 国立情報学研究所客員教授 大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)招へい教授 国立がん研究センター研究所医療AI研究開発分野客員研究員 弁護士(東京) 板倉陽一郎

1 いわゆる破産者マップ及び類似ウェブサイト

 いわゆる破産者マップとは、「官報の破産関係の記載を情報源として、これを包括的・網羅的に収集し、データベース化した上で、インターネット上で地図にプロットして公開した」ウェブサイトであり、2018年12月には存在が確認されていた1。「初代」の破産者マップは、後述する個人情報保護委員会の行政指導により、2019年3月には自主的に閉鎖されたとされているが2、その後も、同様のウェブサイトが断続的に公表される状況にある3

 破産者マップが、破産者のプライバシーを含む人格権又は人格的利益の侵害を構成することはほとんど明らかであるが、ただでさえ破産手続等を経験した者にとって、民事裁判での差止め等を求めることのコストやハードルはいうまでもない4。他方で、行政法規による規律が及ぶのであれば、なぜ、現在も同様のウェブサイトが存続しているのかとい・・・

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