ブロックチェーンと財産権の保障

弁護士(東京) 坂 勇一郎

1 新しい技術と権利保障

 デジタル技術の発達・展開により、暗号資産、NFT、メタバース等新しいサービスが登場している。これらは、技術的にも、理論的にも、制度的にも発展途上にある。また、デジタルサービスであるが故に、国境をまたぐ、または、国籍が必ずしも明らかでないものもある。各国や国際機関の議論もみながら、我が国においても、法理論の整理と制度整備を順次行っていく必要がある。

2 暗号資産と財産権

(1)ブロックチェーン上の暗号資産

 暗号資産は、不特定の者への決済手段として用いられ得る電子的価値(デジタルデータ)である1。ビットコインをはじめ多くのものはブロックチェーン技術2、分散台帳技術3と暗号技術により、暗号鍵による排他的保有と移転を実現している。

 暗号資産(ブロックチェーン自体)の(正当な)保有者は、電子的価値を排他的に保有し移転することができる地位を有する。その私法上の位置づけは必ずしも明確化されていないが4、暗号資産を「財産」または「財産権」ととらえ、ブロックチェーン上ではチェーン上に記録された者を保有者として把握しつつ、ハッキング等による不正取得者は正当な権利者・・・

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