中国消費者法事情(その30)
─個人情報保護法の成立施行─

弁護士(大阪) 白出博之1

はじめに

 2021年8月20日、「中華人民共和国個人情報保護法」(以下「新法」という)が成立し、同年11月1日から施行されている。従前、個人情報の関連規定は、消費者権益保護法、サイバーセキュリティ法、民法典、刑法等に置かれていたが、新法は個人情報の処理・取扱いにフォーカスした初めての単行法であり、全8章、合計74条からなる。

 起草検討がなされた2020年3月当時、中国のネットユーザーは9億人に達し、インターネットサイトは400万件を超え、個人情報の収集・使用はさらに広がりを見せていたが、実生活において一部の企業、機関や個人が商業的利益のため、個人情報を随意あるいは違法に取得し、過度な使用、違法な売買を行うことが発生し、個人情報を利用して人民の平穏な生活を脅かし、その生命や健康、財産の安全に害を与える問題が顕著であること等が、立法の背景事情にある2。新法は目的として「個人情報の権利利益3を保護し、個人情報の処理活動を規範化し、個人情報の合理的利用を促進するため、憲法に基づき、本法を制定する」と規定し(第1条)、個人情報保護分野における基本法と位置づけられる。

※ 中国

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