入管法改定案の廃案と技能実習制度について

弁護士(大阪) 中井雅人

1 廃案となった法案

 2021年5月18日、衆議院法務委員会で審議されていた出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)改定案は、通常国会での成立を見送られ、事実上の廃案となった。審議入り当初は可決されてもおかしくない状況であったが、市民の声が悪法の成立を阻止した。同日までに、日弁連では三つの会長声明と一つの意見書、弁護士会連合会では三つの会から合計五つの理事長声明、各地の弁護士会では42単位会から合計55の決議・意見書・会長声明・会長談話が出された。弁護士や市民主催の法案に反対するデモが全国各地で展開された。筆者も大阪で2度のデモを主催した。2回目は約300人の市民が参加した。この集会・デモの参加者は、当事者、外国人支援関係者はもちろん、労働組合、医療・福祉関係者等、他分野に取り組む団体、ふだん入管問題に接していない弁護士、その他市民のみなさん、と実に多様であった。この多様な連帯こそが、本稿テーマへのひとつの解である。

 現行入管法には様々な批判があるが、当局の権限と裁量が過度に広範であること、裁判所等の第三者機関がその権限と裁量の行使を監視・統制する十分な仕組がない・・・

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