賃貸借契約に関する差止請求前の事前協議申入れによる協議成立の報告

特定適格消費者団体・適格消費者団体 特定非営利活動法人消費者支援ネット北海道事務局長 弁護士(札幌) 原 琢磨

1 協議の経過

 当法人は、令和3年、札幌市内で多数の不動産の賃貸住宅の管理を行っている事業者(事業者名:株式会社コムズ)に対し、当該事業者の使用する賃貸借契約書の契約条項につき事前協議申入れを行った。その結果、当法人の主張のとおり事業者にて契約条項を改善するとの回答を得た。詳細は、消費者庁のホームページに掲載されている本件に関するニュースリリースと当法人のホームページを参照していただき、本稿では、消費者契約法の不当条項に該当するとした当法人の主張を受け入れて、事業者側が改善した不当条項のうち、実務上、先例として有益と思われる点に関して紹介する。

2 賃貸借契約の解除事由と無催告解除特約

 ①賃貸借契約の解除には賃貸人と賃借人の信頼関係の破壊が必要とされていること、また②無催告解除特約が有効とされるには賃借人の背信性が必要であることが最高裁判所の確立した判例であって、その判例に反する解除事由及び無催告解除特約は消費者契約法10条に該当して無効であると解される。前者に関して、本件では、2か・・・

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