県営住宅の原状回復に関する要望の顛末

ひょうご消費者ネット理事長 弁護士(兵庫) 鈴木尉久

第1 はじめに

 本稿は、ひょうご消費者ネットが行った、県営住宅の原状回復義務に関する要望についての、2020年10月発行の本誌125号掲載記事の続報である。

第2 「しおり」に記載された原状回復条項

 兵庫県の「県営住宅住まいのしおり」には、「退去の際には、次に入居する人の立場に立って、入居された時の状態に修繕・回復してください。畳の表替え・ふすまの張り替えは、入居期間の長短にかかわらず必ず行っていただきます。県が設置したカーテンレール及び網戸についても入居時と同等の機能が維持されているよう修繕等をしてください」との条項(以下、「本件条項」という)が記載されている。

 本件条項によれば、県営住宅の入居者は、ごく短期間入居しただけでも、畳の表替え・ふすまの張り替えの費用を負担しなければならないことになり、実際にも、そのような取扱いがなされていた。

第3 ひょうご消費者ネットの活動

1 兵庫県に対する要望書

 2020年7月21日、ひょうご消費者ネットは、兵庫県に対し、本件条項は、民法上は原状回復義務を負わない場合であっても、入居者に対し、畳、ふすま、カーテ・・・

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