311子ども甲状腺がん裁判の提訴について

弁護士(滋賀) 井戸謙一

1 はじめに

 2022年1月26日、福島原発事故当時6歳から16歳で福島県内に居住していた六人の若者が東京地裁に対し、東京電力を被告として損害賠償請求訴訟を提起した。

2 原告らの状況

 六人は、全員が福島原発事故後小児甲状腺がんを発症した。発症時、中学1年生~大学2年生であった。全員が甲状腺の片葉を摘出し、うち4名は再発して甲状腺全摘となった。甲状腺を失うと、RAI治療(放射性ヨウ素を内服し、取り切れなかった残存組織を攻撃する療法。自らの身体が放射線を発するので、一定期間誰とも接触することができない)という過酷な治療を受けなければならない。また、生涯にわたってホルモン剤を飲み続けなければならない。うち一人はその後も再発を繰り返し、4回も手術を受けた。うち一人は、肺転移を指摘された。体調の悪い者が多い。高齢者の甲状腺がんは、比較的軽く受け止められている。しかし、子どもや若者の甲状腺がんは、深刻である。誰もが再発の不安にさいなまれている。

 原告らの中には、希望して大学に入学したのに中退を余儀なくされたり、希望する会社に入社できたのに、退職を余儀なくされた者がいる。罹患前に思・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。