生活保護の審査請求、裁判の紹介─引取り扶養─

弁護士(奈良) 水丸貴美子

1 事案の概要

 奈良県生駒市で起きた、引取り扶養をめぐる保護申請却下処分の事案です。

 本人は精神障害のある50代女性です。もともと生活保護を受給していましたが、令和2年12月、「親類・縁者等の引取り」を理由に生活保護廃止処分がされました。しかしながら、その後親類・縁者等の引取りや援助はなく困窮しました。そこで、令和3年4月に保護申請したのですが、「親類・援助等の引取り」を理由に却下されました(本件却下処分)。その後も引取り扶養や援助はありませんでした。

2 審査請求

 令和3年7月、本件却下処分について審査請求しました。

 審査請求の中で、市は、「扶養調査として、福祉事務所職員三人がAさんの母宅を訪問した際、母が『(実家に)帰ってきたらいい』と発言した」といいました。その上で、生活保護問答集問(5-9)を引いて、母が「帰ってきたらいい」と言っているのにAさんが実家に戻らないのは、感情的な理由による同居拒否だから保護の要件を欠く、と主張しました。

 しかしながら、母は年金暮らしで、70代後半で認知症が相当進んでおり、要介護2で介護サービスを利用していました。母の扶養意思や扶養能力・・・

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