成年年齢引下げまでの消費者教育の過程と課題

弁護士(島根) 遠藤郁哉

1 消費者教育に寄せられた期待

(1)成年年齢の引下げについては、これを実現する民法改正法(民法の一部を改正する法律〔平成30年法律第59号〕)の成立以前より、引下げによって未成年者取消権を失う18歳・19歳の若者に消費者被害が広まるおそれがくり返し指摘されていた。消費者教育は、このような懸念を払拭する重要な方策として、新たな取消権(つけ込み型不当勧誘取消権)等の法整備やさらなる法執行の強化とともに、その充実が強く求められてきた。

(2)こうした経緯から、例えば、平成30年3月に改訂された「消費者教育の推進に関する基本的な方針」では、成年年齢が引き下げられることを見越して、「当面の重点事項」の一つに「若年者への消費者教育」が据えられた。

 また、民法改正法に関する国会審議において、上川陽子法務大臣(当時)は、「消費者教育の果たす役割というものの重要性については、何度も繰り返し申し上げても足りないぐらい重要なものであるというふうに思っております1」などと答弁して、消費者教育を成年年齢引下げに対する重要な施策と位置づけた上、民法改正法の施行までに一層の充実強化を図る旨を述べ・・・

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