マルチ取引に関する法制度上の課題と対応策

一橋大学名誉教授・(独)国民生活センター顧問 松本恒雄

1 はじめに─成年年齢引下げとマルチ取引

 2022年4月1日から成年年齢が満18歳に引き下げられた。

 国民生活センター発行の「国民生活」33号(2015年4月号)は、「若者を取り巻くトラブル─学生を中心に」を特集しており、そこでは典型事例として、投資用DVDを利用したマルチ取引が先輩・後輩関係、同窓、同郷などの関係で行われていることが紹介されている。また、同センターの2021年4月の公表資料1では、2010年度から2020年度までの18・19歳と20〜24歳の各年齢単位での相談件数の平均値を比べて、後者の相談件数が多い商品・サービスとして、情報商材、暗号資産、投資用USBなどが挙げられており、また、購入形態別ではマルチ取引が後者において実に5.5倍に激増している。今後、このような状態が18歳を境に増加していくことが危惧されている。

2 連鎖販売取引と無限連鎖講

 マルチ取引(連鎖販売取引)の規制は、1970年代にアメリカから上陸したホリディ・マジック社などのマルチ取引による消費者被害の多発に対応するために、1976年に、訪問販売等に関する法律・・・

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