近時のマルチ取引被害と法規制について

弁護士(札幌) 道尻 豊

1 近時のマルチ取引被害の傾向

 消費生活相談データベース1によると、マルチ取引2に関する消費生活相談の件数は一向に減少しておらず、毎年1万件強の相談があります。そして、若者がトラブルに遭う割合が年々増加しており、2020年度の相談件数1万171件のうち、20歳未満及び20歳代の相談件数が合計4996件と、実に49%を占めています(表1)。

 マルチ取引の商品・役務等別相談件数では、2017年度以降、「ファンド型投資商品」が第1位となっています(表2)。近時のマルチ取引のトラブルは、健康食品や化粧品などといった物品の販売よりも、投資取引や暗号資産(仮想通貨)などに関する利益収受型の物品・役務等の販売を拡大する手法としてマルチ取引を用いる、いわゆる「モノなしマルチ」に関するものが多くなっています。勧誘方法も、特に若者に対しては、インターネットなどを利用したメール、SNS、マッチングアプリ等によるものが増加しており、組織の実態、中心人物が誰であるかやその連絡先などはおろか、自分を勧誘した相手の素性さえよく分からない場合もあり、被害の回復が困難なケースが増えているのが特徴です・・・

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