落日の消費者契約法─失われた輝きを取り戻せるか─

中央大学大学院法務研究科教授 宮下修一

 2022年5月25日、「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律」が参議院本会議で可決された。3月1日に国会に提出された法律案の原案が、修正なしにそのまま法律として成立したことになる(6月1日公布)。

 今回の改正は、2016年・2018年に引き続き3回目となる。本来であれば、改正のたびに条文が増えていくことを喜び、それを前向きに評価したうえで、今後の改正に向けた提言をするというのが、このような論稿の一般的なスタイルであろう。しかしながら、今回の改正については、誠に残念ながら、そのようなスタイルをとることはふさわしくないといわざるをえない。

 改正案の作成に先立って、消費者庁に「消費者契約に関する検討会」が設置され、2019年12月から2021年9月までの1年9か月にわたり計23回の会議が開催された。この会議で取りまとめられた「報告書」の冒頭には、「報告書の取りまとめに当たって」と題して次のような記載がなされている。「本報告書において示した事項については、これまでの法の考え方を更に拡充・発・・・

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