第9章 欠陥住宅

弁護士(愛知) 石川真司

 令和3年度を中心とした欠陥住宅事件等の裁判例を紹介する。

1 令和3年2月16日 大阪地裁判決〔1〕

 大阪府が大規模な公共工事(雨水溜留用の調節池の設置工事)をしたところ、その隣地にある鉄骨造スレート葺平家建の工場の床面が傾き、天井部に設置してある移動式クレーンに不具合等が発生したとして、大阪府と施工会社(JV)に対して損害賠償請求をした事案。

 裁判所は、大阪府の営造物責任(国賠法2条1項。無過失責任)について検討し、当該調整池は、その築造工事の施工段階のみならず、その設計段階においても、周辺の地盤沈下を可及的に回避すべく慎重、適切な設計を行い、沈下する危険性のある周辺の地盤について補助工法を実施するなどして、周辺建造物の変異を防止するために十分な措置が講じられることが求められる営造物であったといえ、少なくともそのような措置が講じられたということができない限り、公の営造物として通常有すべき安全性を欠くというべきであったとして、大阪府の国家賠償法に基づく損害賠償責任を認めた。ただし、工事前の工場の沈下が損害発生に寄与した割合を6割と認定し損害の4割を本件工事によるものと・・・

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