第6章 保険

弁護士(兵庫) 加藤昌利

 近時の保険法分野における裁判例を紹介する。

1 東京地裁令和2年11月6日判決(外貨建て生命保険の販売について適合性原則違反が認められた事例)

① 判決内容

 本件は、昭和9年生まれの高齢女性が、被告保険会社との間で締結した外貨建て生命保険について、その勧誘行為に違法があるとして、損害賠償を求めた事案である。判決は、以下のとおり、勧誘についての適合性原則違反を認定し、損害賠償を認めた。

 判決は、まず、本件の外貨建て生命保険の商品性について、「本件外貨建て保険は、米国ドル建てで定められた年金額を、各換算日における為替レートで円換算し円貨で支払うものであるから、為替レートの変動により、受取額が支払った保険料を下回るリスクがある商品であり、基本的に、今後為替レートが円安基調で推移すること(少なくとも、現状と大きく変わらない為替レートが維持されること)を想定する者が購入すべきものといえる。しかも、一時払保険料を入金した後は、中途で一括支払いを選択しない限り、少なくとも21年間という極めて長期間にわたって年金が支払われることから、その間はずっと為替変動のリスクにさらされることとなり・・・

この記事は会員に限定されています。ログインしてください。
会員になるには「会員に申し込む」をクリックしてください。