弁護士(京都) 増田朋記
はじめに
本稿では、消費者契約法関係の裁判例として、以下の裁判例を取り上げる。
・津地方裁判所四日市支部令和2年8月31日判決
・仙台地方裁判所令和3年3月30日判決
・大阪高等裁判所令和3年3月5日判決
〔1〕津地方裁判所四日市支部令和2年8月31日判決
1 事案の概要
本件は、歯科診療所との間で、インプラントの施術を内容とする治療契約を締結し、その代金を支払った消費者が亡くなり、その相続人らが、当該歯科診療所に対し、治療契約前に死亡により契約が終了したこと、かつ、当該歯科診療所が亡き消費者にインプラント施術の適応がないことを認識していたことを理由として、代金受領に法律上の原因がないと主張し、不当利得返還請求を行った事案である。
本件では、消費者が契約を締結する際に「自費治療費承諾書」と題する書面に署名・指印しており、その書面の中には「※患者さんの都合により治療を中断された場合、原則として治療費の返還はいたしかねます。」(以下、「本件不返還条項」という)との記載があったため、このような本件不返還条項が消費者契約法に照らして有効であるか否かが争点とされた。
2 判旨
(1)本件不返・・・
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