日本の民主主義運動強化のために(30)—民主政治の危機と民主主義教育—

弁護士(大阪) 木村達也

1 はじめに

 民主主義の危機が叫ばれて久しい。代議制民主主義が国民の分断を招き、選挙の信憑性が低下している。選挙の投票率は、以前は70%を超えていたのに、近時は50%を割っている。投票率の低さは国民の政治への関心の低さと政治のリーダーに対する信頼性の低下を示している。オリンピックや万博博覧会の開催、IR賭博場の開設、コロナ対策など国家的巨大プロジェクトを国民に是非を問うことなく、国や自治体の首長が公然と強行実施する。こうなると最早、選挙は国や自治体のリーダーにどこまでの権限を負託しているのか不明となる。また、選挙に代わる住民投票をどこまで活用すべきなのか、様々な議論が出されてくる。

 最近、藤井達夫氏(著書『代表制民主主義はなぜ失敗したのか』集英社新書)は、「経済格差の拡大で社会の分断が進み、政党は人々の要望に応えられない、一方で自らの自由が脅かされるのもいとわず、強いリーダーを求める動きもあり、それは政治家による政治の私物化を生み出している」と指摘している。また、藤井氏は、代表制改革の方向性として、市民による政治家の監視に加え、市民の重要決定への直接参加を挙げている・・・

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