金沢大学大学院法学研究科教授 尾島茂樹
1 はじめに
政府がキャッシュレス決済の促進を進め1、スマートホンのQRコード決済をはじめとする様々な決済手段が展開している。キャッシュレス決済には、利用額が他の料金と合算して請求されるものもあるが、クレジット・カード(以下、「カード」という)からチャージするものや、合算される他の料金がカードにより決済される場合もあるので、なおカードの決済手段としての重要性は失われず、依然として取引額も大きい。
他方で、カードについては従来から加盟店による不正使用があり、この対策は重要な課題である。この課題の解決のために重要な手段となるのがチャージバックである。本稿では、わが国のチャージバックに関する従来の状況を概観し2、現状に対し若干のコメントを加えたい。
2 従来の状況
チャージバックとは、通常、「イシュアー(カード発行者)がアクワイアラー(クレジット加盟店と契約しイシュアーとの介在をする者)3に対し、不正または瑕疵が疑われる取引についてその理由を明示し、該当取引の売上提示分の支払拒否、あるいは支払い済みの立替金相当額の返還を請求すること」である。これは、VISA、M・・・
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