民法による充当と充当の本質を示す重要な高裁判決

弁護士(神奈川) 茆原洋子

 制限超過貸付の充当問題については、重要な高裁判決を忘れないように、今回は充当の原則に近い判断を出した高裁判決を復習してみたい。その前に、民法の充当と現在の問題状況を振り返ろう。

第1 民法の充当と現在の問題状況

1 対等当事者間の弁済の充当(民法489条・改正後488条4項・以下改正後の条文は省略)による利益と、利息制限法超過貸付のある場合の経済的弱者の地位にある者が弁済の結果の充当による債務減少という弁済者の利益を比較する時、後者(制限超過貸付の借主)の保護が前者(対等当事者)の保護より劣ってはならない。逆に、返済を受ける対等当事者より、制限超過貸付をする貸金業者が保護されることもあってはならない。
 これは利息制限法の立法趣旨そのものから言えることである。

2 ところが、現在、この逆転が起きている。すなわち、利息制限法超過貸付のある場合の経済的弱者の地位にある者が、必死でやりくりをして債務を減らす目的で行った弁済に対して、「基本契約が違う」とか「充当合意がない」といった形式的かつ抽象的な、貸主が幾らでも作りだすことのできる指標によって、充当が否定され、発生した不当利・・・

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