「書面交付」の電子化・有識者検討会審議について

東京大学名誉教授 河上正二

1 問題の所在

 預託法等の改正法やデジタルプラットフォーム関連法の議論とともに、近時、特商法等における「書面」の電子化が、大きな話題になっている。2021年の衆議院消費者特別委員会での参考人質問でも、大きな論点の一つとなった。

 「書面」は、様々な取引形態で消費者の意思決定を守るための基本的方式として規定されており、これを、電子化することによって、契約書の一覧性、第三者による監視や問題の発見、クーリング・オフ期間の開始時期の確定などの機能が損なわれるのではないかという問題意識から、多くの消費者団体や弁護士会などから、電子化に反対の意見が表明されていることは周知のとおりである。たしかに電子データーで契約書や様々な商材の内容が送付されてきたときに、事業者からの情報を見逃したり、留保事項や契約条件を十分考慮せずに「同意」してしまうこともあろうし、危険な契約に巻き込まれていることを家族が発見するのが難しくなるなどの弊害が予想される。そうした懸念を払拭することは、新法にとって重要な課題である。消費者庁としては、政令等で、問題に真摯に取り組む必要がある。あわせて、消費者委員会か・・・

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