資金移動業者の口座への賃金の支払い
「賃金ペイ払い」について

弁護士(愛知) 加藤了嗣

1 「賃金ペイ払い」に関する動き

 労働者への賃金支払いは通貨払いが原則とされており(労働基準法24条1項)労働者の同意を得た場合には銀行預金口座への振込みと証券総合口座への払込みによる賃金支払いが認められている(労働基準法施行規則7条の2第1項1号、2号)ところ、厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会において資金移動業者の口座への賃金の支払い(以下「賃金ペイ払い」と略称する)の導入が議論されており、令和3年4月19日には制度の骨子案(以下、「骨子案」という)が提示された。

 本問題につき、日本弁護士連合会は、令和3年12月16日、「資金移動業者の口座への賃金の支払に関する意見書」を発出したが、本稿は、同意見書の内容を、筆者の理解を踏まえて敷衍して紹介するものであり、同意見書にて言及されていない部分については筆者の私見に止まることをご承知されたい。

2 骨子案について

(1)資金移動業とは

 資金移動業とは、銀行に認められた業務(預金・貸付・為替取引)のうち「為替取引」を緩やかな規制の下で営むことを許容された業種であるが、現在では「◯◯ペイ」等の呼称で、多様なデジタル決済方式に・・・

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