マンションの共用部分等の管理と管理者の訴訟追行権のあり方

早稲田大学法科大学院教授 鎌野邦樹

1 現行区分所有法の規律と東京地判平成28年7月29日

(1)現行区分所有法の規律

 区分所有建物(専有部分のある建物)において共用部分、建物の敷地、附属施設(以下、「共用部分等」という)から生ずる利益は、それらの共有者である各区分所有者が収取する(19条、21条)。その利益には、それらの使用の対価(集会室使用料、駐車場使用料等)のほか、保険金額、損害賠償金、不当利得返還金(26条2項)(以下、「損害賠償金等」という)も含まれるかは問題となる。そして、利益収取権は金銭債権(可分債権)であるため、共用部分等の共有者である区分所有者(11条、14条)が、それぞれの持分に応じて行使することができる(19条、21条)。

 他方、管理者は、その職務として、損害賠償金等に係る請求および受領につき区分所有者を代理する(26条2項)。そして、その職務に関し、規約または集会の決議により、区分所有者のために、原告または被告となることができる(26条4項)。

 ただし、共用部分等について損害賠償金等に係る請求権が生じた後に、区分所有権が譲渡された場合については、管理者の代理権の消長や原告・・・

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